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20世紀SF(3(1960年代))
20世紀SF(3(1960年代))

レビュー評価:5.0(5点満点) レビュー数:2

価格:998円

商品副データ砂の檻 河出文庫アーサー・チャールズ・クラーク/中村融河出書房新社この著者の新着メールを登録する発行年月:2001年02月登録情報サイズ:文庫ページ数:501pISBN:9784309462042【内容情報】(「BOOK」データベースより)20世紀の英語圏SFを年代別に集大成したシリーズ第3巻は、「新しい波」運動が華々しく展開され、SFの可能性を拡大した、激動の1960年代編!火星の砂に埋もれた滅びゆく世界を描いた、時代の旗手バラードの記念碑的作品「砂の檻」、映画『2001年宇宙の旅』にて巨匠の地位を不動にしたクラークの名作、SF界のカリスマ作家エリスンの出世作ほか全14篇。


【目次】(「BOOK」データベースより)復讐の女神(ロジャー・ゼラズニイ)/「悔い改めよ、ハーレクィン!」とチクタクマンはいった(ハーラン・エリスン)/コロナ(サミュエル・R.ディレイニー)/メイルシュトレーム2(アーサー・C.クラーク)/砂の檻(J.G.バラード)/やっぱりきみは最高だ(ケイト・ウィルヘルム)/町かどの穴(R.A.ラファティ)/リスの檻(トーマス・M.ディッシュ)/イルカの流儀(ゴードン・R.ディクスン)/銀河の“核”へ(ラリイ・ニーヴン)/太陽踊り(ロバート・シルヴァーバーグ)/何時からおいでで(ダニー・プラクタ)/讃美歌百番(ブライアン・W.オールディス)/月の蛾(ジャック・ヴァンス)【著者情報】(「BOOK」データベースより)ゼラズニイ,ロジャー(Zelazny,Roger)(1937ー1995年)ユング派心理学や文化人類学と手をたずさえた神話研究は、1950年代後半から60年代にかけてめざましい業績をあげた。

その成果をとりこむ形で、SFと神話の融合をはかったのが、本篇の作者ゼラズニイ(と畏友ディレイニー)だ。

もっとも、ゼラズニイの描く神話世界は、どことなくコミック・ブックの世界が重なって見える。

彼にとって神々とは、一種のスーパー・ヒーローにほかならないのだろう。

ゼラズニイがSF界に登場したのは62年。

翌年からSF史に残る傑作中短篇をたてつづけに発表して、一躍時代の寵児となった。

少年期に耽読したというパルプ時代のSFを、華麗な文章と凝った構成で現代的によみがえらす作風が、圧倒的な支持を集めたのだ。

この時期の傑作群は、短篇集『伝道の書に捧げる薔薇』(71年)にまとめられている。

60年代後半にはインド神話を下敷きにした『光の王』(67年・以上ハヤカワ文庫SF)などを書きあげ、その作家的地位を不動のものとした。

70年代にはいると作風を変え、軽妙な味わいの冒険SFやファンタジーを量産するようになり、商業的成功をおさめたが、才能を存分に発揮していないと批判もされた。

結局、未完の大器のまま95年に没。

テロリストの肖像を描いた『20世紀SF(3)「復讐の女神」』は、作者が私淑するコードウェイナー・スミスのパスティーシュを試みた作品。

〈アメージング〉65年6月号に発表されたエリスン,ハーラン(Ellison,Harlan)SF作家。

ラジオの生放送中に聴取者からお題を募って短篇を書きあげた、などというパフォーマンスは序の口で、つねに派手で物議をかもす言動が生んだ逸話は数知れない。

ファン活動時代から注目され、1950年代にデビュー。

60年代にはいって、数々の著名なTVドラマの脚本家として名をなした。

SF作家としては、〈ギャラクシー〉1965年12月号に掲載された「『悔い改めよ、ハーレクィン!』とチクタクマンはいった」が出世作となる。

全作書き下ろしの巨大アンソロジー『危険なヴィジョン』(67年・邦訳は3分冊の1巻目のみハヤカワ文庫SF既刊)を編集して、アメリカの若手SF作家の代表的存在となり、以後の多くの新人作家を感化した。

ただし本人はジャンル作家に分類されるのをきらい、現にミステリの分野などで高く評価されている作品も少なくない。

邦訳に短篇集『世界の中心で愛を叫んだけもの』(69年・ハヤカワ文庫SF)がある。

エリスンの作品は、怒りと暴力に満ちた内容や、華麗な技巧・文体によって多数の熱烈なファンを獲得したが、その根底には作者の敬愛するレイ・ブラッドベリと通ずる感性があるように思われる。

都会生活に根ざし、弱者の視点に立つブラッドベリともいえるだろうか。

はったりめいたタイトルの『20世紀SF(3)「『悔い改めよ、ハーレクィン!』とチクタクマンはいった」』も、発表から三十年以上を経たいま、その風刺はむしろ痛烈さを増し、“現代の寓話”と呼ぶにふさわしい作品になっているディレイニー,サミュエル・R.(Delany,Samuel R.)ニューヨーク市ハーレムの裕福な黒人家庭に生まれた彼は、黒人ゲットーに親しむいっぽう、高い教育を受けた。

カレッジ在学中には数学者、ミュージシャン、作家のどの道に進むか迷ったという。

けっきょくフォーク・シンガーとしてヨーロッパを放浪した末、二十歳のときに長篇小説を上梓して、作家として出発した。

バイセクシュアルであることも早くから公言している。

これらのバックグラウンドは、その作品にさまざまな形で活かされているが、とりわけ音楽のあつかいはみごとであり、現在のラップ・ミュージックを予見したような作品も著している。

ディレイニーにとって、60年代後半は名実ともにSF界のトップに君臨した時期だった。

『バベルー17』(66年)、『アインシュタイン交点』(67年)、『ノヴァ』(68年・以上ハヤカワ文庫SF)とつづく長篇群は、スペースオペラやヒロイック・ファンタジーの枠組みに作者の自伝的要素をぶちこみ、高度な芸術論や文化論を展開した傑作であり、現代SFの金字塔とみなされている。

70年代以降は実験的な傾向を深め、一種のカルト作家となるいっぽう、犀利な批評家として卓越した活動をつづけている。

〈F&SF〉67年10月号に発表された『20世紀SF(3)「コロナ」』は、作者が中短篇に力を注いでいた時期の作品。

下層社会の描写とスランギーな文体は、たしかに〈新しい波〉だったクラーク,アーサー・C.(Clarke,Arthur C.)新しい作風をもつ若いSF作家たちの台頭著しかった1960年代だか、クラークはすでに作家として、また科学啓蒙家として、そうしたSF界の動向とは別の次元で揺るぎない地位を確立していた。

69年の人類初の月着陸の生中継でコメンテーターをつとめたことは、そのあらわれだろう。

だが、第1巻につづいてこの巻での登場となったのは、なんといっても、映画『2001年宇宙の旅』(68年)があったから。

64年春からの数年、クラークがこの“史上最高のSF映画”に関わる作業に忙殺された一部始終は、『失われた宇宙の旅2001』(72年・ハヤカワ文庫SF)にくわしい。

一方で小説の執筆量は減ったが、数少ない作品は、本篇のように無駄を削ぎ落としたSFの精髄のような作風へむかっていく。

ワンアイデアから人間個人が宇宙とじかにむきあうシチュエーションを設定し、スリルと感動の物語を紡ぎだす名人芸は、巨匠の貫禄を感じさせる。

初出〈プレイボーイ〉1965年4月号。

なお『20世紀SF(3)「メイルシュトレームII」』に登場する電磁力を使った月面からの打ちあげ装置は、クラーク自身が50年に発案した論文て提唱したアイデア。

ちなみに、衛星通信という現代に不可欠のテクノロジーも、じつは最初に発表したのはクラークだった。

「だが、特許をとっていなかったので、ひと財産築きそこねた」とクラークはぼやくことしきりだとかバラード,J.G.(Ballard,J.G.)1957年にソ連が最初の人工衛星スプートニク1号を打ち上げて、宇宙時代は幕をあけた。

61年には早くも有人宇宙飛行が実現し、米ソの宇宙競争は白熱した。

40年代のSFが現実と化したかのような事態に、おおかたのSF関係者は喝采を叫んだが、ひとりこの流れに異を唱える者がいた。

『20世紀SF(3)「砂の檻」』の作者バラードである。

SFはいまこそ外宇宙ではなく、内宇宙に目をむけるべきだという彼の主張は、やがて多くの賛同者を得て〈新しい波〉運動へと発展し、60年代のSF界を大きくゆさぶることになる。

バラードは上海で生まれ、第二次大戦中は日本軍の捕虜収容所で過ごしたという経歴の持ち主。

このときの体験は、S・スピルバーグ監督の手で映画化された自伝的長篇『太陽の帝国』(84年・国書刊行会)に結実している。

作家デビューは56年。

その特異な才能は早くから注目を集めたが、60年代にはいると『沈んだ世界』(62年)や『結晶世界』(66年・以上創元SF文庫)などの傑作を連発し、当代屈指のSF作家にのしあがった。

60年代後半には、自ら“濃縮小説”と名づけた前衛作品に傾注し、賛否両論を呼んだ。

以後は世紀末の幻視者として、SFにとどまらない活動をつづけ、現在にいたっている。

「砂の檻」は、バラードが宇宙計画批判を初めて「錆びついた発射整備塔」に象徴させた記念碑的作品。

〈ニュー・ワールズ〉62年6月に発表された(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)この商品の関連ジャンルです。

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